社長メッセージ

私達らしさを追求し、お客様の期待を上回る価値提供を通じて、持続的な成長と社会課題の解決を両輪として推進します

前年度は過去最高益を達成
2025年度は金利上昇へのさらなる対応に取り組む

2024年度は、金利上昇前から、契約利回りを継続的に向上させつつ営業資産を拡大してきた成果により、過去最高益となりました。リース&ファイナンス事業、インベストメント事業ともに営業資産は大きく増加しており、堅調であったと認識しています。もっとも、成長に向けた投資機会をいかに見出していくのか、という点は課題として残っています。さらに、マイナス金利政策解除から数えると、実質的に3回、政策金利の引き上げが行われました。この急速な金利上昇に対して、新規契約獲得における利回りの向上が必要となる一方、新たな金利水準に即した契約に営業資産が入れ替わるには一定の期間を要します。そのため、金利影響の小さい手数料ビジネスやレンタルの重要性は今後ますます高まってくるものと考えています。
2025年度は、中期経営計画(以下、中計)の最終年度にあたります。ただ、先に触れた金利上昇による資金原価の増加などによって、忍耐の時期になるとみています。着地は、差引利益計画530億円に対して、554億円。営業資産残高は計画値1兆2,400億円に対して1兆3,000億円を見込んでおり、これらの点では計画値を上回る予想で事業成長の観点では中計を達成する見込みです。しかし、金利上昇の負担が大きく、資金原価は前年度比で36億円の増加を見込んでおり、営業利益以下各利益は計画値を下回る予想です。リース&ファイナンス事業、サービス事業、インベストメント事業の各領域がそれぞれに努力しても、この金利負担をすべて吸収するのは難しい状況です。
急速な金利上昇の状況を踏まえると、一時的に足踏みする局面が生じるのはやむを得ない面もありますが、引き続き、収益を圧迫する影響をできる限り小さく抑える努力を重ねていきます。需要の予測では、Windowsのマイグレーションなどが一定程度見込めるほか、企業の効率化や生産性向上を目的とした設備投資も進むと想定しています。このような動向を踏まえ、営業面では当初の計画を上回る成果を目指し、着実に取り組んでいきます。同時に、次年度以降の持続的な成長に向けた投資についても、堅実に取り組んでいく方針です。

私達らしい金融・サービスで、お客様の期待を上回る価値を提供し、
ともに持続的発展を目指す

私は2020年のコロナ禍の真っ只中で社長に就任しました。出社もままならない日々のなか、在宅勤務をしていると、外から子どもたちの声が聞こえてきたのを今でもよく覚えています。子どもですから、ずっと家に閉じこもっているわけにもいきません。外で元気に駆け回る声を聞きながら、「私達はこの子たちの将来を守っていかなければならない」と、強く感じた瞬間でした。そこから、事業そのものも「持続可能でなければならない」という想いがより一層強くなりました。
企業が利益だけを追い求め続ければ、いずれ限界が訪れ、破綻に向かうでしょう。だからこそ、倫理を踏み外さないための自制心が必要であり、社会や周囲の人々から応援される事業でなければならないと考えます。
当社グループは、金融・サービスのビジネスを通して、企業の設備投資のハードルを下げることで価値を提供しています。そこに、プラスアルファの提案やサービスをお客様に提供し、その対価として収益を得ています。ただし、その収益は一過性のものであってはならず、持続可能であることが重要です。お客様の期待を超え、価値を創造し続けることで、お客様も当社グループも永続性が生まれます。だからこそ、何でもよいから稼ぐのではなく、しっかりとお客様の期待を超え続けていくことが大切なのだと思います。まさに『論語と算盤』(渋沢栄一の著書)が象徴するように、道徳と経済の両立は当社の基本姿勢にほかなりません。
「私達らしい金融・サービスで豊かな未来への架け橋となります。」という経営理念のもと、当社グループらしい方法で期待を超え続けていきたいと考えています。

リース事業で育んだ強みを水平展開し、
ノンアセットビジネスを強化する

当社グループの事業は、複写機をはじめとする事務機器の販売支援を中心とするオフィス分野からスタートしました。そこで得たお客様の広がりやノウハウを軸に、新たに成長できる分野を模索し、根幹の強みは維持しつつ、事業領域を変異・拡大させてきました。目下、さまざまな新しい取り組みを進めているところですが、当社グループの原点であり、強みであるオフィス分野について、あらためてその重要性を再確認しています。その背景には、新たな領域に注力するあまり、オフィス分野が現状維持にとどまっているのではないかという危機感が社内にあったからです。
しかし本来、当社グループが他の領域に挑戦できるのも、オフィス分野での強みが前提としてあればこそです。いわば、当社グループにとっての得意な領域で圧倒的No.1になることが他領域への展開にも説得力を与えると考えています。たとえば、オフィス分野の知見から、当社グループは少額・小ロットからの取り扱いを得意としています。当然、大口の契約と比べると事務処理量は膨大で、コストは高くなります。そのため、当社グループは事務処理における効率性を磨いてきました。審査依頼から始まりリース満了までの、ベンダーやお客様との一連のプロセスではいまだ紙の手続きも多くIT化は一部にとどまっており、一層の高効率を実現するために徹底したデジタル化を進めてまいります。
こうした取り組みの前提として必要なのが標準化です。まずは、あらゆる業務プロセスを見直し標準化を徹底し、その上で効率化を追求していきます。お客様にもデジタル移行をお願いすることになりますが、移行によって手続きはよりスムーズになり、スピーディーに進めることが可能になります。両者にとって、効率的で価値のある取引が実現できる仕組みを構築していきたいと考えています。
オフィス分野をはじめとした最重要基盤について「効率を伴った拡大」を目指すと同時に、「新たなビジネスモデルへの挑戦」として、アセットに拠らないビジネスも拡大させていきます。リースは、固定資産税の納付や保険の契約など多岐にわたるお客様の業務を代行するという側面があります。そもそもリース契約自体がお客様の事務代行であるというメリットがあり、オフィス分野を中心にリース契約を積み重ねてきた強みを持つ、私達ならではの新たな価値が提供できる領域として認識しています。なかでも注力するのは、as a ServiceとBPOの2つの事業分野です。BPO分野には、口座振替やコンビニ収納などの集金代行サービスに加え、外国人受け入れをトータルサポートするリロケーションマネジメント事業なども含まれます。集金代行サービスは、元来の強みから派生した領域であり、当社グループにとって親和性の高いビジネスです。そして、基本的にアセットを伴わず、資金効率の面からも利点があり、堅調に取り扱いも伸びています。
as a Service分野は、企業のIT部門の負荷軽減を目的に、パソコンなどの機器に、関連するサービスを一体化して提供しています。たとえば、オフィスで使用するパソコンに対して、あらかじめセキュリティ関連のソフトウェアをインストールし、その設定や故障時のサービスを付帯するなど、「すぐに使える、いつでも使える状態」でのレンタルを提供しています。昨今は、パソコンや車などは資産というより、仕事をするためのツールという価値観になっており、「モノを持つ」から「機能を調達する」という発想へとニーズがシフトしています。こうした変化を的確にとらえ、ツール化できる機能をas a Serviceに取り込んでいければと考えています。
当該分野を強化するにあたっては、物流や、パソコンの作業や保管をするバックヤードなどリース事業とは異なるインフラが重要になります。物流についてはアウトソーシングも可能ですが、バックヤードに関しては自社での保有が不可欠であり、サービス提供のスピードと技術力、品質を高めるために、オートメーション化も視野に入れるなど積極的に投資していきます。
あわせて重要になるのが「人」の部分です。人財の確保はもちろん、事業の拡大・高度化に伴い、ステップアップに耐えうる人財の能力向上も欠かせません。こうした部分には着実に投資を行い、事業の成長を揺るぎないものにしていきます。

  • BPO(Business Process Outsourcing):業務プロセスの一部を専門事業者に外部委託すること
既存ビジネス強化+新規ビジネス創出の図版

人と教育、 人財に対する投資は
競争力強化のためにも必要不可欠

当社グループは製造業ではありません。そのため、物理的な製品ではなく、社員一人ひとりの存在こそが、最も重要な資産であると考えています。人的投資については、2025年度において、社員一人ひとりへの教育投資を強化し、学ぶ習慣を根づかせることに重点的に取り組んでいます。
将来的には、難関資格などの資格取得に対しては、明確な難易度区分を設けた上で、それぞれの難易度に応じたインセンティブ制度を整えていく予定です。重要なのは、自らの意志で“登りたい山”を見つけ、それに向かって挑戦する姿勢です。登った先に明確なリターンがあることで、自律的な学びや成長が促され、それが結果として業績や組織力の向上にもつながっていきます。
あわせて、この数年間で給与水準についても引き上げ、賃上げ率ベースでは10%上昇しています。2025年度も5%引き上げを実施しました。待遇とスキルアップ、その両面から人財への投資を行うことで、競争力強化を着実に進めてまいります。
さらに、2026年度から始まる次期中計においては、よりインパクトのある人的投資を実施したいと考えています。

バランスシートマネジメントを行いつつ、
成長領域に対して必要な投資を着実に行う

財務上の観点では、当社グループの営業利益規模がおおむね200億円、株主に帰属する当期純利益が140億円規模とすれば、少なくとも140億円以上のキャッシュ・フローが生じます。これをいかに配分するかが経営の要です。成長領域に対する投資を行い、経営基盤を支えるシステムや人財のための投資を行わなければ、株主への還元を優先させたとしても、持続性を失ってしまいます。
先に触れた人的資本への具体的な投資方法も、検討策の一つです。こうした点を含めて、どんな領域にどのように投資を行うかについて、次期中計で明確化できるよう、取締役会で議論を深めています。他方、成長を促すためには、M&Aも変異の手段の一つと考えています。ただし、当社はM&Aを頻繁に行う企業ではなく、実施にあたっては当社のビジネスを強化するものに絞り、成長に不可欠であればという慎重なスタンスで臨んでいます。
資本政策を考える上では、財務の健全性とROE、PBRは重要な観点だと考えています。ROEの向上を図らなければなりません。また、PBR向上も重要です。ROEの向上を図っていくことで、発展的にPBR改善につながるととらえています。その過程で、資本戦略を伴うバランスシートマネジメントが必要だと考えます。
当社の株主資本コストについて、CAPMベースでは5%半ば程度で、当社のROEはそれを上回る状態で推移しているものの、資本市場が当社グループに対して期待するレベルのROEには達していないと認識しています。このギャップを埋めていくために、適切な打ち手を講じていく考えです。バランスシートの適切なマネジメントとともに、一過性の自己株式取得ではなく、継続的な配当による還元を重視して取り組み続けます。

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循環創造企業を目指し、
道徳的な取り組みを経済的価値に結びつける

当社は『循環創造企業へ』という中長期ビジョンを掲げています。これは、特定したマテリアリティを通じて社会課題の解決に取り組みながら、企業の成長機会に貢献することで、社会価値と経済価値を循環させることの重要性を示しています。
マテリアリティは『論語と算盤』でいえば「論語」、すなわち道徳的な取り組みに該当します。ただし、道徳で終わるのではなく、そうした取り組みが結果として経済的な果実として「算盤」にもつながっていくと私は考えます。もちろん、リコーリースグループで社会課題を解決するには限界がありますが、大切なのは継続して取り組み続けることです。当社が担う設備投資、「モノ」の循環を絶やさず続けていくこと自体が、企業の支援となり、社会課題解決への貢献になると信じています。そして、「論語」と「算盤」の両立を継続することで、社会も当社グループもともに成長していく。そのような好循環を生み出していく企業であり続けたいと考えます。
私達はこのような循環を通じて、経営理念「私達らしい金融・サービスで豊かな未来への架け橋となります。」の実現を目指しています。経営理念は、それぞれの事業部門が自分事としてとらえられるように、部門ごとの理解を本部方針に掲載するなど具体化することで、浸透を図っています。

計画の進捗をモニタリングし、意見交換できる場を設け
多様な視点で厳格なガバナンスを実行

当社グループの取締役会は現在13名で構成されており、そのうち8名が独立社外取締役です。過半数を独立社外取締役が占めており、女性取締役の比率も3割を超えています。多様性とガバナンスの両面において非常に優れた体制であると認識しています。また、社外取締役および監査等委員については、任期の上限を定めていることで毎年1 ~ 2名の新たな取締役が加わる体制となっており、取締役会が固定化することなく、常に新しい視点が入り続けるガバナンス運営が実現できています。
加えて、現在M&Aなどを通じて事業の広がりが進み、異なる背景を持つ人財が組織に加わっています。当社グループの経営理念や価値観をしっかりと共有し、全体としての方向性を揃えていくことが今後の重要な課題の一つと考えています。
こうしたなかで、取締役会に加え、中期経営計画に関する個別のミーティングも随時実施しており、各テーマについてより深い議論が行われる場を設けています。さらに、独立社外取締役のみで構成される非公式の意見交換会(独立役員懇談会)も定期的に開催しており、ここでは議事録を設けず、自由な意見交換を行うことで、率直で建設的な対話が促進されています。このように、オンサイト・オフサイトの両面から事業や経営のモニタリングと意見交換を継続的に行っており、取締役会以外においても、健全で開かれた議論の循環が形成されていると認識しています。

ステークホルダーの皆様へメッセージ

当社グループに対しては、真面目で手堅い会社というイメージをお持ちいただいている方も多いと思います。そうした堅実さは当社グループのベースであり、今後も変わらず大切にしていきます。その上で、成長に向けた投資を着実に行いながら、企業としての持続的な発展を目指していく所存です。同時に、株主の皆様への分配も重視しており、特に配当については、累進性をできる限り継続していきたいと考えています。
ステークホルダーの皆様には、当社の考え方や姿勢をご理解いただき、安心して応援いただける存在であり続けるべく一層努めてまいります。

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